音楽の批評は生きているのか?
現代社会における音楽ジャーナリズムの在り方が問われています。音楽ジャーナリストの「みの」の発信が話題を呼び、音楽ファンのみならず文芸界や言論界にまで影響を及ぼしています。これは、単なる動画が流行する現象で終わらず、文化としての意味合いを持つことが期待されています。特に、影響力を持つアーティストや楽曲に対する批評が、SNS上で活発な議論を呼び起こしている理由を探ります。
背景:音楽ジャーナリズムの課題
音楽雑誌が持っていた「批評の場」を再考するきっかけを作ったのは、サカナクションのボーカルである山口一郎氏が提起した「現代の音楽シーンにおける批評とジャーナリズムの不在」についての発言でした。これを受けてみのは、その動画内で音楽業界の抱える根深い問題に取り組んでいるのです。
1.
アンチと批評の混同: 音楽の質を論じることが、時に人格攻撃やアンチ活動に誤解され、批判的な意見が受け入れられにくい状況が続いています。
2.
経済的制約: 音楽ライターとして活動する上での厳しい経済状況が、真の意見を発信することを難しくしています。低い原稿単価やプロモーション依存の状況は、忖度のある意見を書かざるを得ない環境を生んでいます。
3.
優しい批評の蔓延: みの自身も、信頼を築くためにネガティブな意見を避ける傾向がありました。このような構造が、より優しい批評の流通に繋がり、本質的な批評の形成を妨げていることに気づいたのです。
現象の核心:アルゴリズムを超える言葉
みのが公開した特定のアーティストに対する批評は、SNS上で注目を集めました。また、音楽的構造や時代に沿った批評が新たな議論を巻き起こしています。例えば、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」に関する動画では、プログレッシブな展開が評価され、「令和の覇者」としての音楽的特性が分析されました。サカナクションの「怪獣」の批評では、知性的な側面とともにリズムの保守性についても言及され、リスナーに新たな視点を提供しています。
みのの対話への招待
みのは自らの活動を「視聴者との思考のプロセスを共有する場」と位置づけています。プロモーションと批評が同じ経済圏に在る現在、忖度の無い意見を発信することが難しいという彼自身の経験もあります。SNS上の誹謗中傷が問題視される現代において、音楽に対する批評が「優しい言葉」で満たされる中で、あえて一石を投じることが重要だと訴えています。
なぜ今「批評」が求められるのか
AIによるリコメンドが普及した時代だからこそ、人々は数値では測れない「主観的な熱」を求めているのかもしれません。専門知識に裏打ちされた生身の言葉が、音楽文化をより豊かにしていく可能性を模索しています。一人の表現者が健全な批評を通じてコミュニケーションを促進し、新たなカルチャーを形成することが求められています。
みののプロフィール
音楽ジャーナリストおよびクリエイターであり、1990年にシアトルに生まれました。自身のYouTubeチャンネル「みのミュージック」では、多角的な視点で音楽の分析を行い、登録者数は53万人を超える人気を誇ります。また、Apple Musicのラジオ番組『Tokyo Highway Radio』に出演するなど、幅広いメディアで活動しています。彼の著書には、『みののミュージック』や『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』があり、高い評価を得ていることも見逃せません。
このように、音楽ジャーナリズムが新たな転機を迎えている中、みのの活動は今後も注目され続けるでしょう。