岡山大学が発見した脂肪代謝の新メカニズムとその応用可能性

今回は、岡山大学が誇る学術研究において、注目すべき成果が発表されました。国際共同研究によるこのプロジェクトは、中国の厦門大学附属病院との協力を基にしており、脂肪組織における食後の脂質処理メカニズムを解明しました。

この研究で特に注目すべきなのは、天然由来の小分子化合物「エスクレチン」についてです。研究チームは、エスクレチンが脂肪組織マクロファージ（ATM）における食後脂質の貪食作用をいかに促進するのかを探求しました。具体的には、エスクレチンが転写因子C/EBPβに直接結合し、その結果としてスカベンジャー受容体CD36の発現を高めることが明らかとなりました。この作用により、HDLコレステロールの生成を促し、胆汁酸排泄経路を活性化させることで、食後の血中脂質のクリアランスが加速されるとのことです。

従来の研究方法では捉えにくかったこの相互作用を可視化するために使用されたのが、テラヘルツ波ケミカル顕微鏡（TCM）です。この技術は主にテラヘルツセンサー分野での応用が目立っていましたが、主に病理研究への新たな展開を示すことができました。具体的には、エスクレチンとC/EBPβの結合を非侵襲的に観察できたことで、この技術のポテンシャルが証明されたのです。

研究結果は、科学雑誌『Theranostics』に掲載され、特筆すべきことに、インパクトファクターが12.4という高評価を得ています。王璡准教授は、「脂肪を単に溜めるだけでなく、処理する役割がマクロファージにあることが新たに明らかになりました。テラヘルツ波技術を用い、分子間相互作用を可視化することで、食後代謝を制御する新しいメカニズムの扉を開くことができたと考えています」と述べています。

この研究の発展は、医療や健康分野への応用が期待され、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病改善への寄与が期待されています。特に、近年ではメタボリックシンドロームが社会問題となっている中、エスクレチンの効果を医療に役立てることができれば、多くの人の健康管理に寄与できるでしょう。

国際共同研究として得られたこの成果は、今後の岡山大学にとっても大きな強みとなることは間違いありません。地域中核・特色ある研究大学としての成長と、さらなるイノベーションの促進に貢献するこの研究に、今後も注目が集まるでしょう。