eラーニングの利用実態と課題:大企業の人材育成戦略を探る
最近、NTT HumanEXが実施した調査によって、日本の大企業におけるeラーニングの利用状況と、それに伴う課題についての重要なデータが浮かび上がりました。この調査は、従業員数が1000名以上の企業の人事や総務担当者を対象に行われ、企業内の人的資本開示の実態やeラーニングの導入状況を探るものでした。さて、調査結果からどのようなことが読み取れるのでしょうか。
1. 調査の背景と目的
現代のビジネス環境では、人的資本の重要性がますます高まっています。特に、リーダーシップや従業員のエンゲージメント、ダイバーシティに関する情報開示が求められる中、それに対応するための具体的な手段としてeラーニングが注目されています。一方で、実務上の課題から、なかなか満足のいく結果が出ていない企業も少なくありません。この調査は、企業が直面するeラーニングの実際の姿を把握し、今後の人材育成に役立てることを目的としています。
2. 調査結果の概要
人的資本開示の現状
調査によると、人的資本開示の実施状況は、「一部開示」と回答した企業が約50%を占める一方で、全く開示していない企業も約20%存在しました。積極的に開示している企業は約30%にとどまり、開示に対する意識の高まりはあるものの、実際の行動にはギャップが見られることが分かりました。これは、特に大企業において顕著です。
人材育成への重視
人的資本開示で特に重視されているのは「人材育成」であり、52.3%の企業がこの項目を挙げました。続いて「従業員エンゲージメント」が44.5%、さらに「ダイバーシティ」が32.0%という結果が示されました。この結果は、企業が短期的な結果に終わらせず、組織としての持続的成長を目指していることを示しています。
eラーニングの予算
eラーニングに関連する年間予算では、「1000万円以上」が約20%と最も多く、次点で「300万~500万円未満」「500万~1000万未満」が続きました。これらを合計すると、全体の約半数が一定の投資を行っていることが分かります。このことは、企業がeラーニングの重要性を認識し、積極的に資源を投入している証拠と言えるでしょう。
研修内容の傾向
eラーニングで実施される研修内容としては、「コンプライアンス」が69.0%、次いで「情報セキュリティ」が60.7%とされ、基本的なリスク管理や法令遵守などが重視されていることが明らかになりました。中長期的な戦略として「DX人材育成」や「リーダーシップ開発」も進められていますが、その導入状況にはまだ一貫性がなく、企業によってばらつきが見られます。
課題として浮き彫りになったモチベーション
eラーニングの導入による課題として最も多かったのが「学習者のモチベーションの維持」で、35.4%がこの課題を挙げました。さらに「教育効果の測定が困難」「研修コストが高額」といった声も見られ、特に効果検証や費用対効果の観点からの設計が不十分であることも浮き彫りになっています。
3. 今後の展望
今回の調査結果は、eラーニングの活用が進む中でも、企業が直面する様々な課題を理解するための貴重なデータとなりました。今後は、これらの課題を解決するために、より効果的なプログラムの設計や実施が求められます。
この調査データは、企業が人的資本戦略を進めるにあたっての参考になります。NTT HumanEXは、引き続きデータ分析や調査を通じて、持続可能な組織作りに寄与していく所存です。詳細な調査レポートのダウンロードが可能ですので、興味のある方はぜひご覧ください。