J-POPの世界進出を支える新たな基盤
過去数年間にわたり、日本の音楽ビジネスは「ガラパゴス」と呼ばれ、その特異性が指摘されてきました。また、国内におけるCD市場は盛況でありながら、ストリーミングサービスの普及が遅れ、国際展開も不足しているなど、多くの課題が存在していました。しかし、2020年に発生したコロナ禍は、この状況を一変させました。
コロナ禍がもたらした意外な変化
ライブイベントや店舗での販売活動が制限される中、音楽レーベルはこれまで未配信だった楽曲のストリーミング解禁に乗り出しました。この結果、SpotifyやApple Musicといったプラットフォーム上に、日本の楽曲が山のように解放されることになります。特に、YOASOBIの「夜に駆ける」やAdo、藤井風といった新世代アーティストの登場に加え、竹内まりやや山下達郎といったシティポップの名曲が再評価され、世界中のリスナーに受け入れられています。この変化は、アルゴリズムとSNSの相乗効果によって加速され、日本発の音楽が国境を越えて聴かれる時代が訪れました。
新たなヒット指標の登場
これまでの「ミリオンセラー」がヒットの証とされていた時代は終わり、今や「ビリオンストリーム」がグローバルでの成功の新たな指標となっています。ストリーミングは、リスナーが音楽を繰り返し聞く文化を促進し、数年経った曲でも再生数が伸びることが珍しくなくなりました。著書『音楽ビジネス』では、ヒットの定義がどう変わってきたのか、そして再生数が周辺収益にどのように寄与するのかを詳細に解説しています。この「ビリオンストリーム」という指標を活用することが、日本のアーティストが世界市場で競争する際にいかに重要であるか、という点も検討されています。
テクノロジーの進化が音楽の未来を変える
現在、DTM(デスクトップミュージック)やAI作曲ツールの進化により、誰もが自宅で高品質な音楽を制作できるようになっています。さらに、アルゴリズムやプレイリスト戦略はアーティストの発見や再生回数に大きく影響を及ぼす要素となっており、特にショート動画プラットフォームのTikTokは新曲や古典的な楽曲の拡散の場として機能しています。実際に、シティポップや高中正義の楽曲が再び注目を浴び、リバイバルヒットを記録する例が続出しています。著書ではこのようなテクノロジーによる変革が、日本の音楽が国際的に届く基盤をどのように築いてきたのかを探求しています。
誰にでもおすすめな一冊
本書は、音楽業界でのビジネスに従事したい方や、コンテンツ産業に挑戦しようとしているビジネスパーソン、さらにはアーティストとして活動する方や音楽ファンにもおすすめです。具体的なデータや事例を挙げながら、音楽ビジネスの現状を分析し、新たなヒットの要因と未来を語りかける一冊となっています。
書籍詳細
『音楽ビジネス』は、著者鈴木貴歩氏によって、2025年10月17日に刊行予定です。定価は1848円で、信頼性の高い情報を256ページにわたって提供します。
ぜひ、J-POPがなぜ現在、世界的な人気を集めているのか、その背景を探る旅に出てみてはいかがでしょうか。