嶋津輝の最新作『カフェーの帰り道』
11月12日に刊行される嶋津輝の新作『カフェーの帰り道』は、彼のキャリアにおいて第三作目にあたります。デビュー作『姉といもうと』がオール讀物新人賞を受賞し、二作目の長編『欅(たすき)がけの二人』が直木賞候補に選ばれるなど、近年注目を集めている著者による新たな物語です。
本書の内容
『カフェーの帰り道』は、大正から昭和の時代に、東京の下町に位置する「カフェー西行」を舞台にしています。このカフェーは、当時の人々の憩いの場であり、働く女給たちの個性豊かな姿が描かれています。彼女たちが運営するこの店から繰り広げられる物語は、時代を超えて共鳴するものがあります。
女給という職業は、単なる接客だけでなく、客との会話を通じて時代の変化を映す鏡のような役割を果たしていました。彼女たちのエプロンには銘仙に白いフリルがついており、その姿は当時の流行を象徴しています。
本書の主人公たちは、魅力あふれるキャラクターばかりです。竹久夢二風の化粧をしたタイ子、創作に苦しむセイ、面倒見の良い嘘つき美登里、そして大胆な嘘をつく新米女給の園子。彼女たちは「カフェー西行」で様々なエピソードを織り成し、それぞれの人生を模索していきます。これらの物語は、時代背景を感じさせながらも、現代の私たちの心にも響くものがあります。
対談付き書籍の魅力
本書の刊行にあたり、著者の嶋津輝は作家・原田ひ香との対談も行っており、彼女からの絶賛の言葉をいただきました。この対談では、物語の背景や著者の創作に対する情熱が語られており、読者にとって一層深く作品の魅力を理解する助けとなるでしょう。
終わりに
『カフェーの帰り道』は、約百年前の東京を舞台にしながらも、女給たちの悩みや喜びは現代の私たちにも共感できる部分が多い作品です。彼女たちの姿からは、強さや優しさを感じ取ることができ、心温まる一冊となることでしょう。ぜひ手に取って、その魅力に触れてみてください。カフェーの温かな空気を感じながら、この短編集を楽しむことができるはずです。