訪問看護の未来を拓く要因
訪問看護とは、自宅で療養を行う患者に対して看護師が直接訪問し、必要な医療サービスを提供する仕組みです。訪問看護は、特に高齢者や重度の障害を持つ患者にとって重要な存在となっていますが、業界全体にはいくつかの課題が山積しています。中でも、事務作業が多く、看護師が本来の業務に集中できないという問題が深刻です。ここでは、大阪にある「ななーる訪問看護ステーション」の取り組みを通じて、訪問看護のデジタル変革の可能性を考えます。
構造的課題とその解決策
訪問看護業界では、看護業務に加え、日々の事務作業や請求業務に追われがちです。公益社団法人 日本看護協会の調査によれば、訪問看護の事務職員は1ステーションあたり0.7名と非常に少なく、看護師が事務業務も兼ねていることが多いと言われています。これが、看護師の負担を増やし、ケアの質にも影響を及ぼしています。
「ななーる訪問看護ステーション」では、こうした業界の構造的課題を解決するために、リモート支援型の専門運営を実現しています。すべてのバックオフィス業務を大阪に集約し、看護師たちが本来の看護業務に専念できる環境を整備しました。
デジタルファーストの取り組み
設立当初からデジタル技術を基盤にした運営を進め、全12の拠点を持つ「ななーる訪問看護ステーション」は、看護師が煩雑な事務作業から解放されるように設計されています。事務業務は本部で効率的に行い、看護師の負担を軽減することが鍵となっています。
常務取締役の勝眞久美子氏は、「事務職の確保が難しいからこそ、業務を本部に集約し専門化することで、現場での専門性が高まる」と語ります。このように、テクノロジーを駆使することで、看護師たちが質の高いケアを提供できる環境が整えられています。
DX化による質の向上と支援体制
また、ななーる訪問看護ステーションでは、訪問看護専用電子カルテ「iBow」を活用し、リアルタイムで情報連携を深めています。これにより、現場の看護師たちは患者の状態を即座に把握し、必要なサポートを提供することが可能です。さらに、夜間の緊急対応や終末期ケアにおいても、常に本部からのサポートが受けられる体制が整っています。
負担が増える夜勤を担当するスタッフには、精神的な支援や業務調整が提案され、常に安心して質の高いケアを提供できるよう配慮されています。これにより、看護師たちの働く環境も改善され、精神的な健康を保つための支援が行き届いています。
地域医療における貢献
過疎地域での医療アクセスの問題も、「ななーる訪問看護ステーション」は解決の一助としています。デジタル技術を活用し、遠隔地であっても質の高い訪問看護が提供できる仕組みを構築しています。地域に密着しながらも、専門的な事務サポートを本部が行うことで、各拠点は看護の質向上に注力できるのです。
未来への展望・訪問看護の可能性
「ななーる訪問看護ステーション」は今後もデジタル技術を駆使し、在宅医療の発展に貢献していく姿勢を崩しません。看護師たちがより質の高いサービスを提供できる環境を整えながら、地域医療での役割を果たしていくことが求められています。これからの訪問看護に期待されるのは、ただのICT化に止まらない、真のDX化による業務プロセスの変革です。これらにより、看護の質と地域医療への貢献が新たなステージへと進むことが期待されます。