訪問看護に迫る熱中症の危機
日本の夏は年々厳しさを増しており、2025年6月には厚生労働省が新たに義務付けた「改正労働安全衛生規則」が施行されます。その内容は、熱中症対策をしっかり行うことが事業者に求められるというもので、特に訪問看護の現場においては、その遵守が難しい実態が浮かび上がっています。
先日、株式会社eWeLLが596名の訪問看護従事者を対象に行った「熱中症対策に関する緊急アンケート調査」の結果を基に、現場が抱える課題を詳しく見ていきましょう。
訪問看護従事者の熱中症経験
調査では、なんと36.7%もの訪問看護従事者が業務中に熱中症(もしくはその疑い)を経験したと回答しています。また、多くの人が何らかの対策を講じているものの、80%近くの人が自己管理に頼る現状が浮き彫りになりました。
「訪問先での水分補給や冷却グッズの持参は自己責任」との声が多く上がり、組織からの支援が欠如している実態が見えてきます。訪問看護の特徴である孤独な作業環境が、体調不良を報告しづらい状況を生み出しているのです。
利用者宅における課題
さらに、利用者宅での熱中症対策は、訪問看護従事者にとって大きな挑戦です。82.9%の看護師が、利用者が水分を摂ることを拒むという課題を挙げ、63.1%は「エアコンを使用しない」という壁に直面していることが浮き彫りになりました。利用者にとっては経済的な理由や価値観から、看護師が自身の健康を守るために「エアコンを使ってほしい」と言うことに困難を感じる場面が多く見られます。
法改正の周知不足
驚くべきことに、施行されたばかりの「改正労働安全衛生規則」について67.4%の訪問看護従事者が詳細を「よく知らない」と答えています。これは、罰則規定があるにもかかわらず、現場に届いていないことを示唆しています。具体的な業務内容に即した形で、情報が伝えられる仕組みが必要です。
現場の声
調査の中からは、訪問看護従事者の声もたくさん寄せられました。
- - 「訪問予定を適正に調整してほしい、特に入浴介助を連続して行うのは過酷」
- - 「ウォーターサーバーや夏用のユニフォームを提供してほしい」
また、行政側に対しても「車の停車スペースを作ってほしい」という希望が伝えられました。これは単に熱中症対策だけでなく、地域の在宅医療全体に影響する課題です。
今後への展望
eWeLLは、今回の調査結果を基に、更なる訪問看護の効率化や安全対策として、DX技術の面での支援を推し進めています。訪問看護従事者が、より安全に、またより効率的に働ける環境を整えることが求められています。在宅医療の質を高め、持続可能な経営に貢献するために、現場の「声」を大切にしていくことが重要です。