地域医療の未来を探るオンライン講演会レポート

2025年11月21日に、人材教育を行うヒューマンアカデミー株式会社によるオンライン講演会が開催されました。この講演会には、ウェールズ大学トリニティセントデイビッドのMBAプログラムを修了した卒業生、山口大学医学部附属病院の准教授であり臨床教育センター副センター長の齊藤裕之氏が登壇。彼は日本の医療が直面するさまざまな課題と、医療従事者にとってMBAの学びがどのように役立っているかについて熱く語りました。

講演の背景

昨今、人生100年時代の到来や急速なテクノロジーの進化が進んでいる中で、医療分野でもマネジメント力や経営スキルが求められています。ヒューマンアカデミーのMBAプログラムは、様々な分野で活躍する専門家がビジネススキルを学び、それぞれの現場に活かすことを目指しています。今回の講演会は、地域医療の最前線で活動する卒業生が、それぞれの経験を共有することで、医療におけるマネジメント教育の重要性を訴えるものでした。

齊藤裕之氏の発表内容

齊藤氏は自身の医師としてのキャリアに基づき、日本の医療政策の現状や課題について説明しました。特に2017年に行われた全国調査では、医療費や医師、看護師数の増加が死亡率の改善にはつながらないとの結果が示されており、意外にも医療資源の投入だけでは健康の改善には繋がらないことが明らかになったと述べました。このことは、医療資源の投入のみに依存する政策の見直しが必要であることを示唆しています。

さらに、齊藤氏は日本の総合診療医制度がアメリカに比べて50年遅れていること、そしてその専門医の数が依然として少ないことを指摘。2040年問題に対処するためには、現役世代が医療従事者にならなければ現在の医療水準を維持することが困難であるため、早急な対応が求められています。

社会的要因の影響

日本の健康問題については、医療アクセスはわずか20%に過ぎず、40%は地域や社会環境に起因するという分析結果を紹介しました。齊藤氏は、住民同士の繋がりが健康に与える影響の重要性を強調し、地方における社会的なつながりの強化が健康改善につながる可能性を示しました。このことから、医療政策には地域社会の特性を考慮することが必要であると訴えました。

MBAプログラムの意義

齊藤氏は、山口県で総合診療研修施設を拡大した事例を挙げ、若手医師が予防医療を提供できるよう育成することが地域の健康改善に繋がると強調しました。彼がMBAで学んだマネジメントの原則を地域医療に応用し、総合診療医の増加による死亡率の低下を証明することを目指していると述べました。

まとめ

この講演会は、齊藤氏が直面する多くの課題に真正面から向き合いながら、地域医療の未来について深く考える貴重な機会となりました。医療従事者、政策立案者、さらには一般市民にとっても、これらの議論を通じて地域医療の重要性とその未来を見据える姿勢が求められています。さらに多くの人々がこのような視点を持ち、地域医療の発展に寄与することが期待されます。