線虫の塩味好み逆転
2025-03-11 01:43:26

線虫の塩味好みを逆転させる神経回路の新たなメカニズムを解明

線虫の塩味好みを逆転させる神経回路の新たなメカニズムを解明



岡山大学と室蘭工業大学の共同研究グループが、線虫(C. elegans)の塩味に対する好みがどのように逆転するのか、そのメカニズムを明らかにしました。研究チームは、線虫が育てられた環境の塩濃度に依存して、その塩味を好む特性を持つことを示したのです。

研究の背景


線虫はさまざまな環境に適応することができる生物です。特に、食べ物とともに育てられた塩濃度を記憶し、その経験に基づいて行動を変える能力があることが注目されています。つまり、高い塩濃度の環境で育った線虫は塩味を好む一方で、低い塩濃度で育った線虫は塩味を嫌う傾向があります。このような鮮明な嗜好の逆転は、線虫における特異な神経回路機構によるものと考えられています。

研究の目的と方法


今回の研究は、岡山大学大学院環境生命自然科学研究科の弘中誠勝大学院生と、室蘭工業大学大学院工学研究科の墨智成教授(当時岡山大学に所属)によって行われました。研究チームは、機械学習の技術である進化的アルゴリズムを利用し、線虫の塩走性を再現する神経回路モデルを作成しました。

この研究では、(1)塩濃度の記憶がどのようにコード化されるか、(2)その記憶を読み出すことで塩嗜好性が逆転する新しいシナプス可塑性、(3)好みの塩濃度方向へ線虫を導く神経回路メカニズムが詳細に分析されました。

研究成果


シミュレーション実験を通じて、研究チームは線虫の神経回路が興奮性ニューロンから抑制性ニューロンへと結合特性を反転させる、新たなタイプのシナプス可塑性を有していることを確認しました。この可塑性によって、外的な塩濃度で育った際の経験に基づいて、線虫は自らの嗜好を変化させることができるのです。

特に本研究のポイントは、哺乳類には見られないこの新しいシナプス可塑性にあります。これにより、線虫は味覚に基づく走性を選択的に変化させることができると考えられています。

研究の意義


今後、この知見が脊椎動物の学習や記憶に関する理解を深める基盤となることが期待されています。神経回路が環境に依存した学習をどのように実現し、記憶を取り出して行動に結びつけるのか、さらなる研究が求められています。

この研究成果は、2025年に国際科学誌「elife」に掲載されました。今後の応用研究に大きな期待が寄せられています。

研究資金


本研究は、令和6年度第46回両備檉園記念財団生物学研究助成金及び科学研究費助成事業により支援されました。

こうした貴重な研究成果は、将来的には人間の記憶や学習に関する新しい知見を提供するかもしれません。

岡山大学のさらなる研究活動に注目が集まります。


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