声と心が響き合う朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』の魅力

朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』が魅せる独自の世界

2025年9月13日から15日まで、草月ホールにて朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』が上演されます。本作は原作・宮島未奈の人気小説を基にしたもので、2023年の発刊以来、多くの読者に共感され、本屋大賞も受賞しています。物語の主人公は、強い意志を持った女子高生・成瀬あかり。彼女の成長を描いたストーリーは、ただの青春物語に留まらず、様々な人間模様や友情を掘り下げていきます。今回は、特に声優たちによる演技がどのように物語に命を吹き込んでいるのか、詳細にお伝えします。

物語の概要

物語は、2020年の真夏に舞台を設定し、成瀬あかりがコロナ禍において様々な挑戦を通じて自分自身を見つけていく過程を描きます。彼女の行動力や独自の感性は、周囲の人々を巻き込む力を持ち、その様子は観客に強いメッセージを伝えていきます。この朗読劇では、日替わりのキャストによって、毎回異なる解釈や表現が楽しめるのも特徴の一つです。

演者たちの魅力

初日公演では、成瀬あかり役を岩田陽葵、島崎みゆき役を紡木吏佐、西浦航一郎役を梅田修一朗が演じることが決まっています。特に岩田の演技は、そのまっすぐな感情表現が印象的でした。日常会話の中に潜む決意や、他人との距離感を恐れずに貫く強さを自然なトーンで伝え、観客を一瞬で物語の中に引き込んでいく力を持っています。また、紡木の柔らかい声表現が、成瀬の個性を受け入れる島崎というキャラクターの特性をうまく引き立てていました。

一方、梅田が演じる西浦は、成瀬あかりの強烈な個性に振り回されながらも、その中で自分自身を見つけようとする普通の高校生。梅田の声からは、彼の成長や葛藤が豊かに感じられ、観客にとってリアルな感情移入が生まれます。このように、キャストの表現力が物語全体を見事に支えているのです。

演出と音楽

本作の演出は、リアリズムで知られる野坂実が担当しており、彼の手腕が随所に現れています。セリフの間や呼吸、キャラクター間の距離感など、声だけで構成された舞台だからこそ生まれる繊細な演出が随所に感じられます。また、特に注目すべきは朗読劇のために書き下ろされたオリジナル音楽です。シーンごとに流れる音楽が、物語の雰囲気を引き立て、登場人物たちの感情を丁寧に表現しています。

友情と思春期の葛藤

『成瀬は天下を取りにいく』の物語は、友情や成長、そして自分自身を見つける過程がテーマです。成瀬と島崎の軽快な掛け合いは、物語にユーモアを加えつつ、彼女たちの友情がどのように育まれていくかを映し出しています。また、西浦とのシーンでは、成瀬の持つ力強さと西浦の普通さという対照が際立っており、彼らのやり取りには緊張感と温かみが共存しています。

重層的な人間関係が展開される中でも、力強い言葉と感情豊かな声でしっかりと描かれる友情は、確かな愛情を感じさせます。

終演後の反響

初日の公演が終わると、アフタートークが行われ、キャストたちは役への思いや演出について語りました。岩田は、原作への強い圧力を感じながらも、自らの理解を反映させようと奮闘したことを明かしました。紡木は、キャストが日替わりで異なる解釈を持ち込むことで、観客に新たな発見を促す楽しさを語り、梅田は役柄の新たな挑戦について述べました。このように、三人の熱意が伝わるアフタートークは、今後の公演への期待感をさらに高めるものでした。