デジタル技術が導く日本の伝統工芸の未来
日本の伝統工芸を守り続けるための新しい試み、「CrafTouch」プロジェクトが2024年4月に沖縄で始動します。今回はこのプロジェクトの詳細と、2025年6月に開催予定の「日本工芸産地博覧会」における展示について紹介します。
プロジェクトの背景と目的
現在、日本各地の伝統工芸は後継者不足の危機に直面しています。少子高齢化の影響を受け、職人の技が失われる危険性が増しているのです。そこで、一般社団法人日本工芸産地協会と産学連携し、「CrafTouch」プロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトは、壺屋焼の窯元である育陶園を舞台として、デジタル技術を活用し、職人の技能を記録・伝承することを目的としています。
特に注目すべきは、ハプティクス技術を用いた技能の保存方法です。この技術により、職人の感覚や動作をデジタルで再現し、次世代に伝承することが可能になります。職人の「コツ」や「感覚」を言葉以上に直感的に伝える手法が模索されているのです。
日本工芸産地博覧会での展示
2025年6月16日から18日まで、大阪で開催される「日本工芸産地博覧会」での成果発表が予定されています。会場はEXPOメッセ「WASSE」となり、来場者は「Project Cybernetic being」によるロボットと触覚技術を活用した職人技のデジタル共有の現場を体験できます。
この展示は、未来の工芸とデジタル技術の融合を示す重要な一歩となるでしょう。観客参加型のワークショップも予定されており、一般の方々が直接職人技を体感できる貴重な機会となります。
プロジェクトの進行経緯
このプロジェクトは、2022年7月のワークショップに端を発しています。工芸とデジタル技術の融合についての議論が交わされ、そこから現在の取り組みが始まりました。第1弾として堀田カーペット株式会社との共創が行われ、その成果が先の「日本工芸産地博覧会2023」に出展されました。
デジタル技能伝承の仕組み
プロジェクトに参加する株式会社commissureは、装着型ハプティックセンサ「SenseFuse™」を用いて職人が普段の陶芸制作の中で感じる「触覚」や「力覚」を記録しています。このデータをもとに、職人の動作を再現するロボットアバターも開発されています。これにより、実際の職人とロボットが連携し、技能を共に体感する新たな形の教育が実現しようとしています。
参加メンバーの想い
プロジェクトに参加する原岡知宏氏は、本プロジェクトが工芸業界の課題解決の手助けになることを期待しています。また、育陶園の高江洲若菜氏も、限られた時間の中で伝統を継承することの難しさを語り、新たな技術の導入が職人育成において重要だと述べています。
南澤孝太教授(慶應義塾大学)は、デジタル技術による表現力の限界を広げる可能性について語り、伝統工芸が未来へ向かうための道を切り開いていく希望を感じています。
結論
「CrafTouch」プロジェクトは、日本の伝統工芸の未来を豊かにする可能性を秘めています。デジタル技術を活用しながらも根本にある技術や価値観を大切にし、将来の工芸技術を支える新しい手法が広がることが期待されます。日本工芸の先端を体験するこの展示では、観客自らがその一部を感じ、未来の工芸に貢献する機会となるでしょう。