積水化学、動物由来成分フリーの細胞接着ポリマーを発売

積水化学工業が新しい細胞接着ポリマーCeglu™を発表

積水化学工業株式会社は、iPS細胞などの幹細胞の培養を安定的に実現する細胞接着ポリマーCeglu™を使用したマルチウェルプレートの販売を、2023年6月30日より開始しました。この製品は、再生医療に関わる研究や製造において直面する多くの課題を解決することを目指しており、特に簡便性、安定性、安全性を強調しています。

1. 現代医療の課題

近年の医療技術は飛躍的に進展しているものの、依然として解決が求められる健康課題が存在します。中でも、高齢化社会や希少疾患への対応は急務です。再生医療、具体的にはiPS細胞を利用した治療法は、こうした課題を解決する可能性が高いとされています。iPS細胞は、患者自身の細胞から生成できるため、拒絶反応のリスクが低く、さまざまな細胞に分化できる特性が魅力です。しかしこのiPS細胞の培養には、コーティング材が必要であり、現在のタンパク質コーティングは均質性や安定性に課題を抱えていました。加えて、これが再生医療の実用化に向けた障壁となっていたのです。

2. Cegluの開発背景と特長

Ceglu™は、これらの課題を解消するために開発された新しいポリマーです。化学合成ポリマーと細胞接着分子を融合させることで、従来のタンパク質コーティング材に見られるデメリットを克服しました。この製品は、京都大学との共同研究を経て誕生し、高い均質性と安定性を実現しています。また、室温でも保存可能で、冷蔵保存が不要という特長があります。これにより、取り扱いの利便性が大きく向上しています。

3. Ceglu™の具体的な機能

Cegluは、iPS細胞の培養に適した化学合成ポリマーで、さまざまな素材の表面をコーティングすることが可能です。動物由来成分を一切含まず、高い安全性を誇ります。この製品を使用することで、ラボスケールから製造スケールまで一貫して細胞接着プラットフォームを構築することができます。そして、実際の活用例としては、iPS由来の心筋細胞への分化、自動培養装置との組み合わせによる細胞品質の向上、コーティングによる細胞培養のスケールアップが挙げられます。