出自を知る権利の重要性とJISARTの倫理的提言について
2025年2月7日、特定生殖補助医療に関する法律案が国会に提出される中、日本生殖補助医療標準化機関(JISART)は「出自を知る権利」に関する倫理的な提言を発表しました。この提言は、現代における生殖補助医療のあり方や、それが未来の子供たちに与える影響について深い洞察を促します。
JISARTのこれまでの実績と立場
JISARTは2008年から非配偶者間体外受精を倫理的に実施しており、その過程で多くの経験が蓄積されています。加盟する医療機関は、最新の科学に基づいた体制で、各種の支援を整えています。2025年3月時点では、30の加盟施設中6施設がこの治療を導入し、計166件の治療が承認され、114人の子どもが誕生しました。その内、提供者の82%は兄弟姉妹であり、匿名での提供はわずか4%という結果が示すように、家族の絆を重視した形で治療が進められてきました。
JISARTの倫理的取り組み
ガイドラインの制定
JISARTは、2008年に独自のガイドラインを設け、非配偶者間体外受精に関する倫理的な枠組みを明確化しました。提供者からの適切なカウンセリングが行われることを前提に、手順を整備しています。
専門的なカウンセリング体制
非配偶者間体外受精は、心理的に影響が大きいため、JISARTでは専門カウンセラーの配置を義務付けています。治療の全期間を通して、一貫してサポートを提供できる体制が整えられています。
フォローアップ部会の設置
2011年にはフォローアップ部会が設立され、子どもや家族の発達チェックを行い、必要に応じたサポートや相談を行っています。これにより、心理的安定と健全な家族関係の維持に貢献しています。
提供者プロフィールの整備
子どもが自らのルーツを理解できるよう、提供者の情報をプロファイルとして整理し、将来子どもに開示される制度も整っています。これにより、出自についての理解を深めることを目指しています。
出自を知る権利に関する取り組み
JISARTが掲げる「出自を知る権利」は、さまざまな側面から理解される必要があります。
- - 15歳以上の子供が提供者情報を請求可能。
- - 提供者情報の開示に際して、個別相談・カウンセリングを提供。
- - 早期の出自告知を推進、同意・理解をしっかりと確立します。
- - 匿名提供に関しても情報共有を支援。
- - 医療機関が閉院した場合でも、JISARTが情報を継承する体制も整備。
しかし、法案には様々な懸念も存在します。開示できる情報が個人非特定情報に限られ、請求が成人に達してからに限定されるため、必要な支援制度が欠如していることが問題視されます。
JISART倫理委員会からの提言と未来への展望
JISART倫理委員会は、出自を知る権利の保障が、出産を迎える子どもたちに重要であると指摘しています。「出自」に関する知識が自己アイデンティティ形成において重要な役割を果たすため、法的な枠組みのなかでその権利をしっかりと保障すべきです。
- - 15歳以上の子どもが特定情報を請求できる制度の確立。
- - 早期告知の推進に向けた国の支援。
- - 医療機関における倫理的・制度的支援の明確化。
こうした提言は、生まれくる子どもたちの幸せと成長を見据えた制度設計を目指しています。
結論
提供型生殖補助医療が広がる中で、子どもたちの福祉を中心とした制度が求められています。JISARTは今後も出自を巡る倫理や実践を重視し、その実践を通じて社会的合意と制度整備に貢献していくことでしょう。これによって、多くのカップルが幸福な家庭を築ける未来が拓かれることを願っています。