正露丸の新たな可能性
大幸薬品株式会社は、国立感染症研究所との共同研究を通じて、正露丸の主成分である「木クレオソート」がアニサキスの運動を抑制する可能性を発見しました。この研究は2023年にマウスを用いた動物実験を通じて行われ、その成果が論文として2025年に発表される予定です。
アニサキス症の背景
アニサキス症は、生または十分に調理されていない魚介類を摂取した後に数時間後に腹痛を引き起こす疾患であり、日本の生食文化と深く結びついています。厚生労働省の統計によれば、2024年の食中毒発生件数は1,037件、そのうち330件はアニサキスによるもので、この数は年々増加しています。これにより、アニサキス症は国際的な問題ともなっており、食の安全が大きな課題となっています。
木クレオソートの効果
木クレオソートは正露丸の主成分で、歴史的にはエジプトのミイラなどにも使われていたとされています。近年の研究では、木クレオソートが腸内細菌に影響を与えずに、水分吸収を促進し、大腸の過剰な運動を抑える効果があることが示されています。大幸薬品は過去には試験管内での研究が中心でしたが、今回の研究により生体内での効果が実証されました。
研究の詳細
新たな研究では、アニサキスを経口投与したマウスに木クレオソートを投与したところ、アニサキスの運動が著しく抑制されることが確認されました。この結果は、木クレオソートが生体内でもアニサキスの動きを抑える力を持つ可能性を示唆しており、今後の応用に向けての重要な一歩となっています。
研究者のコメント
大幸薬品の社長は、木クレオソートの効果について「新たな薬効解明の根拠になると考えています」と述べています。また、共同研究者の国立感染症研究所の研究者も「生体内での検証ができたことで、科学的根拠が強化されました」と語り、今後の研究の発展を期待しています。
今後の展望
大幸薬品は、木クレオソートの薬効をさらに深め、アニサキスによる食中毒に苦しむ人々の痛みを軽減するための取り組みを続けていく意向です。この研究から得られた知見が、食品業界や医療現場において、アニサキス症の予防・軽減に役立つことが期待されます。日本の食文化を守るため、引き続きの研究が求められます。