SACLAが実現した酵素の瞬間を捉える新技術の可能性
2025年12月18日、大阪医科薬科大学や大阪大学などの研究グループが、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いて、ユニークな二液混合装置を活用し、酵素の反応過程をミリ秒レベルで可視化することに成功しました。この成果は、酵素の動きをリアルタイムで捉え、その機構を解明する新たな一歩となります。
研究のポイント
この研究のポイントは、銅含有アミン酸化酵素の触媒過程を連続的に観察できる新技術の開発です。これまでの技術では捉えきれなかった短時間の構造変化を、SACLAの能力を利用して実現しています。この二液混合装置を使用することで、酵素と基質が反応を開始してから数十から数百ミリ秒後の中間体の構造を決定することに成功しました。
具体的には、酵素が触媒過程で構造を変化させる様子を観察し、そのメカニズムを解明しました。従来は、活性中心での変化のみが考えられていましたが、今回の成果により、ドメインレベルの構造変化が活性中心に影響を及ぼすことが明確になりました。
研究の意義
今回の研究は、酵素科学や生命科学の分野において重要な意義を持つものです。酵素の構造変化は、反応の効率や機能に密接に関係しており、理想的な酵素デザインへの道を開く可能性があります。酵素が複数の反応ステップを経る際に、迅速に最適な構造を取る必要があるため、その動きの原理を理解することは非常に重要です。
この技術が確立されることで、新たな機能を持つ酵素の設計がさらに進むことが期待されます。研究チームは、今後多様な酵素にこの手法を適応させ、より広い範囲のタンパク質を研究する意向を示しています。
研究者のコメント
研究に関与している村川助教は、「質の高い微結晶を得ることが非常に難しかったが、多くの知見が得られた。二液混合法を用いた時分割SFXは困難を伴う技術だが、酵素反応の「パラパラマンガ」を作る夢に向けた重要な一歩だ」と語っています。
まとめ
本研究は、酵素の動きをリアルタイムで捉える新しい方法を提示しており、生命科学の未来に大きな影響を与えると期待されています。SACLAのさらなる技術進展により、酵素研究が新たな次元に進むことが予想され、今後の研究成果に注目が集まります。