音楽フェスを視覚に障害のある方へ開放するプロジェクトの挑戦

2025年11月22日・23日、群馬県高崎市で開催された室内型音楽フェス「GFEST.2025」では、視覚に障害のある方々が音楽フェスを体験するための新たな試みが行われました。このプロジェクト「Route for Music」は、見えない方でも音楽を楽しむことができる大胆な取り組みです。これを実現したのは株式会社SIGNINGと、視覚障害者向けデバイス「あしらせ」を手掛ける株式会社Ashiraseの共同プロジェクトです。

製品の概要と取り組みの背景

「Route for Music」は、音楽イベントの障害のある方々の参加を促進することを目的としており、音楽は耳だけでなく、振動や体全体で感じるものだという理解を促すため、技術を活用します。特に、「あしらせ」は靴に装着する振動デバイスで、音楽イベント特有の騒音環境でも、音圧を感じることができます。

この取り組みは、スペースシャワーエンターテインメントプロデュース株式会社の協力で実現し、初回の実証実験は6名の視覚障害者とその家族・友人で構成されました。参加者は音楽の迫力を体全体で感じる体験を得ることができました。

音楽フェスの魅力を伝える

イベント当日、初めて音楽フェスに参加する方々は緊張した面持ちでしたが、徐々に生の音楽のパワーに圧倒され、自然と体を動かすようになりました。中には「体の中まで音を感じた」と興奮する参加者も。手拍子や体を揺らしながら、音楽に没頭する姿は、本当に素晴らしいものでした。

音楽を感じることができる唯一の存在である「声」を超えて、視覚に障害があっても豊かな音楽体験が可能であることを、このプロジェクトは証明したのです。

振動ナビゲーションデバイス「あしらせ」の実力

「Route for Music」の重要な要素である「あしらせ」は、視覚に障害のある方々が自立して音楽フェスを回遊する手助けとなるデバイスです。特に、人混みや大音量の中で役立つこの技術は、今後の音楽イベントがより多くの人に開かれるために重要な役割を果たすと期待されています。

イベント中は、参加者が行きたいキッチンカーを指定すると、デバイスがその場所までの道を振動でナビゲート。参加者は自分の好きなお店に行くことができ、音楽とグルメの両方を楽しむことができたのです。

参加者と運営側の対話

今回の実証実験では、参加者とプロジェクト運営チームによるディスカッションも行われました。そこでは、感動の声だけでなく、今後のイベントでの課題や提案が交わされ、参加者がより自由に音楽を楽しむための意見交換がなされました。「自分が連れて行く感覚」を楽しんだという言葉が印象的でした。

今後への期待

このプロジェクトはまだ始まったばかりですが、参加者の声や体験を通じて、より多くの人々が音楽フェスを享受できる環境を整えていきます。今後の進展が期待されます。

SIGNINGの岡村和樹氏は「この挑戦を通じて、多くの可能性を感じた」と述べており、次のステップを模索しています。一方、 Ashiraseの八神倫治氏は「この体験が当事者の新しい行動を生み出したことに手応えを感じる」としています。

音楽はすべての人に届くべきものであり、この取り組みはその第一歩となりました。今後、音楽体験のアクセシビリティがさらに広がることを期待しましょう。