熱中症対策義務化から見えた企業のリアルな認知度と取り組み状況
エフアンドエムネット株式会社が発表した調査によると、2025年6月に施行された労働安全衛生規則改正による熱中症対策の義務化に関して、企業の認知度と実際の取り組み状況に大きなギャップが存在しています。調査対象は建設業、製造業、運送業、警備業で働く男女300名。結果をもとに現状を振り返ります。
認知度と驚きの現実
調査によると、熱中症対策義務化に関して72%の従業員が何らかの形で認知している一方で、初めて知ったという回答も28%にのぼりました。このことから、制度の周知が完全には進んでいないことが浮き彫りになっています。
周知方法の偏り
熱中症リスクや対応フローについての周知方法を見ると、「朝礼やミーティングで説明」が52%と多い反面、実施していないと答えた人も30%に達しました。つまり、熱中症対策周知においては一過性の説明が多いことが分かります。企業はポスターやチャットツールなど別の方法でも情報提供を行う必要があります。
WBGT測定の実施状況
この調査の重要なポイントは、WBGT(暑さ指数)の測定についての取り組みです。企業のわずか16.7%が定期的に測定・記録を行っており、さらに41.7%の企業は測定すら「検討していない」と回答しています。この内容は、義務化の根幹に対する企業の意識の低さを示唆しています。
現状の対策と課題
新たに実施した熱中症対策として最も多かったのは「水分・塩分補給の徹底」で50.7%。しかし、なんと31.3%の企業は「特に対応していない」と答えています。この権利を行使することが企業にとってのリスク管理だけでなく、基幹事項となることを理解していない企業が多いことが分かります。
緊急時の報告体制の脆弱性
緊急時の報告体制についての調査では、わずか9.7%の企業が「全員が理解している」と断言できる状況でした。約46.3%の企業が「周知はしたが理解にムラがある」と答える中、44%が体制が「未整備」と答える始末です。今後、対策実施には緊急事態に備える構造の標準化が求められるでしょう。
課題はコストと認識不足
熱中症対策への取り組みで感じる課題として、最も多かったのは「コストがかかる」で40.7%を占めました。この他にも「運用が複雑」との声が30.3%、特に「何をすべきか分からない」との声が29.0%寄せられており、金銭的なハードルと運用面での課題が浮き彫りになっています。
結論と今後の支援について
調査結果を総合すると、熱中症対策の義務化によって企業は認知度が高まったものの、実際の取り組みには多くの課題が残されています。企業は法令遵守だけでなく、実際の労働環境を見直し、従業員が安全に働ける環境を整える必要があります。また、行政に対しては補助金の拡充や具体的な指針が求められています。従業員の生命を守る責任を果たすためにも、この課題解決への第一歩を踏み出す時期が来ています。