近年、私たちの体内には様々な重金属が蓄積されるリスクが高まっています。特に食生活が影響を与える重金属の存在に対して、解毒の必要性が叫ばれています。このたび、岡山大学の松本卓也教授を中心とした研究チームが、重金属を効率的に除去する新しい経口医用材料を開発しました。この材料は、骨構成成分であるリン酸カルシウムを用いており、消化管内に侵入した重金属を多く回収し、体外に排出することが可能です。
この研究成果は、1月24日に英科学誌『Journal of Hazardous Materials』に掲載されました。特に注目されているのは、土壌から穀物を介して人体に侵入する重金属、特にカドミウム(Cd)の除去が可能である点です。カドミウムは日本で有名なイタイイタイ病の原因物質で、全国的に問題となっています。そのため、アジア地域では高い関心が寄せられ、日常的に摂取している食物からの影響を軽減するための努力が求められています。
本研究は、リン酸カルシウムの特性を活かしたもので、消化器官内での骨構成成分の働きを取り入れています。具体的には、リン酸カルシウムが胃内の低pHで溶解し、小腸内の中性pHで再結晶化するという特性を活用しています。実験では、マウスにカドミウムを含む水を与えたところ、この材料がほぼ100%の高効率でカドミウムを除去できたことが確認されました。
松本教授はこの成果について、「デトックスと言えば、活性炭やキレート剤のイメージが強いが、我々の材料はそれらよりも高効率で重金属を除去できる。安全性も担保されているので、幅広い人に利用されることが期待されています」とコメントしています。これは、消化器系からの重金属除去が可能な新しい解毒剤として、多くの人々に求められることでしょう。
今後の展望としては、さらなる研究を進め、実社会での応用を目指すとのこと。その研究成果が、私たちの健康にどのように寄与するのか、非常に楽しみです。研究は独立行政法人日本科学技術振興機構などの支援を受け、今後の進展が期待されます。
岡山大学が今後も地域社会に対して持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた研究を推進していく中で、本研究がどのように影響を与えるのか、ぜひ注目していきたいところです。