岡山大学が解明した地球大酸化イベントのメカニズム
近年、岡山大学で行われた画期的な研究が注目を集めています。この研究では、約21〜24億年前に地球の大気に酸素が急増した「大酸化イベント」における重要な要因として、海水中のニッケルと尿素が役割を果たしていることが示されました。これは、地球の歴史における極めて大きな現象を理解するための重要な手掛かりです。
この研究を主導したのは、岡山大学大学院自然科学研究科のDilan M. Ratnayake大学院生(当時)や田中亮吏教授、さらに中村栄三教授から成る研究グループです。彼らは、シアノバクテリアの成長と酸素放出が、海洋中のニッケルと尿素の濃度バランスによってどのように制御されるのかを詳しく調査しました。
紫外線がもたらす尿素の生成
始生代の海洋環境を模した実験を通じて、紫外線が尿素を生成するプロセスを確認しました。この尿素が、シアノバクテリアにとって重要な窒素源となることがわかりました。一方、海水中のニッケル濃度が高いとシアノバクテリアの成長が抑制されることが分かれば、ニッケルが減少することでシアノバクテリアが増加し、酸素濃度が上昇する状況が生まれるのです。
この研究結果は、地球史の中でシアノバクテリアが光合成を開始するまでに約10億年の時間差が生じた理由を解明するものであり、古代の海洋環境におけるニッケルと尿素のバランスが大酸化イベントに影響を与えたことを示唆しています。
研究の重要性と未来への期待
研究を進める中で、Ratnayake大学院生は「この研究は、まるで巨大なジグソーパズルを完成させるような過程でした。比較的短期間で実験を終えましたが、その後のデータ評価には多くの時間と労力が必要でした」と振り返ります。
田中教授は「ディランさんとは毎日のように議論し、予想外の発見に至りました。この研究を通じて、新たな興味を持ち、チャレンジ精神を養った彼の今後が楽しみです」とコメントしています。彼らの研究成果は、2025年8月12日に「Nature Portfolio」のオンラインジャーナル「Communications Earth and Environment」に掲載されました。
研究資金と支援
この研究は、日本学術振興会の科学研究費や科学技術振興機構の支援を受けて実施されました。成果が今後の科学技術の発展や生命の起源に関する理解を深めることに貢献することが期待されます。
まとめ
岡山大学の研究が明らかにしたニッケルと尿素の関係は、地球の歴史を理解する上で新たな視点を提供します。この成果が今後の地球科学や生命科学に与える影響は計り知れず、私たちが知っている地球の営みの基盤を新たに築くものとなるでしょう。