岡山大学が解明した受精卵におけるミトコンドリアの分配機構の重要性
2025年8月27日、国立大学法人岡山大学の研究チームが、受精卵におけるミトコンドリアの分配に関する画期的な研究成果を発表しました。この研究は、胚の発生過程においてミトコンドリアが果たす役割を深く理解するための重要な一歩です。
ミトコンドリアとは
ミトコンドリアは細胞内の小器官であり、エネルギーの生成を担当しています。また、動的に分裂と融合を繰り返す特性を持ち、細胞内で重要な役割を果たしています。特に受精卵においては、受精後すぐにミトコンドリアが活発に分裂し、細胞分裂に際して均等に分配される必要があります。
研究の背景
今回の研究は、岡山大学の若井拓哉准教授を中心に、鳥取県のミオ・ファティリティ・クリニックやモナシュ大学と協力して行われました。研究グループは、受精卵のミトコンドリアがどのように分配されるかに着目しました。特に、ミトコンドリア分裂を制御するタンパク質Drp1に焦点を当て、その欠⻑がどのように胚の発生に影響を与えるのかを調査しました。
研究の発見
研究チームは、Drp1が枯渇した受精卵ではミトコンドリアが顕著に凝集し、娘割球への分配が不均一になることを発見しました。この異常な分配は、ミトコンドリアだけでなく小胞体や染色体の分配にも影響を及ぼし、胚発生の早期停止を引き起こしました。
正常な受精卵と異常な受精卵の違い
正常な受精卵では、ミトコンドリアが染色体周辺に均等に配置され、分裂時に同様に均等に分配されます。しかし、Drp1が欠如した受精卵では、ミトコンドリアが細胞中心に集まり、染色体の整列を妨げる結果となり、二核の異常な割球を形成することが確認されました。
今後の期待
この研究結果は、ヒトの体外受精卵にも類似の異常が見られることから、将来的には生殖補助医療(ART)の安全性や効率性を向上させるための基礎知識として重要な意義を持つと考えられています。ヒトにおける受精卵の発生過程をより深く理解し、医療技術の改善に貢献することが期待されます。
若井准教授のコメント
若井准教授は、この研究が「お母さん(卵子)から子どもへ遺伝するミトコンドリアの均等な分配が非常に重要であることを示している」と述べ、まるで「財産の相続」のように例えました。また、共同研究者へ感謝の意を示し、大学院生たちの努力がこの成果につながったことを伝えました。
研究資料
今回の研究結果は、アメリカの科学雑誌「eLife」に掲載されており、今後の研究活動の基盤となるでしょう。データの取得と分析において、さまざまな関係者の協力が不可欠でした。この発見が、生殖に関する科学の新たな道を開くことに期待されます。
参考情報
詳しい研究内容は岡山大学の公式サイトで確認できます。
岡山大学研究成果
この研究は、日本学術振興会による支援も受けており、岡山大学は「持続可能な開発目標(SDGs)」を推進する大学としても知られています。これからも地域社会の未来を共に切り開いていくことに力を注ぐことでしょう。