音楽とAIの未来を見据える「AIに関する音楽団体協議会」の新たな提言

昨今、AI技術が急速に進展し、「Suno AI」や「Sora2」などのサービスが広まりつつあります。しかし、これによりクリエイターやアーティストの権利を侵害するコンテンツが増加し、深刻な問題を引き起こしています。このような状況を受けて、「AIに関する音楽団体協議会」は、音楽クリエイターとアーティストの権利保護とAIの適切な利用に関する意見を表明しました。

現状の課題と協議会の立場

協議会は、音楽関連の9団体で構成されており、クリエイターとアーティストの権利を守るため、AI技術の利活用が創造のサイクルと調和することを重要視しています。そのために、透明性を確保することが必要不可欠であるとし、具体的な法的措置として、生成AI開発者に学習用データの記録、保存、開示を義務付けることを訴えています。

さらに、AIが生成した権利侵害コンテンツに対して、クリエイター自身が削除要請を行うことを強いるのは許されないとし、AIを開発した企業にも法的責任を負うべきであると述べています。このように、AIの開発と利活用における責任を明確にすることで、クリエイターたちが安心して活動できる環境を整えることが目指されています。

AIの進化とクリエイターの権利

また、生成AIによって作り出される作品が、既存のアーティストのスタイルや作品に酷似しているケースが増加しており、結果としてクリエイターの活躍の場を狭める可能性があるとも警鐘を鳴らしました。現行の著作権法では、営利目的でのAI利用に対して権利者の意見を反映させる機会が限られているため、これを改善し、権利者が反対の意思を表明できる仕組み作りが求められています。

特に、アーティストの肖像や声、演奏スタイルを模倣するディープフェイクコンテンツに関して、早急な法的対策を講じる必要があります。また、AIの学習用データに海賊版などの権利を侵害する複製物を使用することを厳しく禁止し、罰則を導入することも提言されています。

音楽文化の持続的発展に向けて

音楽は文化の一部であり、それを支えるクリエイターとアーティストの権利が十分に保護されることで、音楽文化はさらに発展していくと考えられています。「AIに関する音楽団体協議会」は、クリエイターやアーティストがAI技術を安心して利用できる環境を整えることが重要であるとし、「for Creators, for Artists」という理念のもと、今後も活動を続けていくとしています。

2024年2月10日には文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について（素案）」に対する意見を提出しましたが、今回の意見表明は、その活動を継続し、さらに広げていく意思を示しています。私たちも、音楽文化が持続的に発展するための取り組みに注目していきたいと思います。