尾上松也が訪れたジャパニーズウイスキーの聖地
ジャパニーズウイスキーが、なぜ世界的に愛されているのか。その理由を求めて、歌舞伎俳優の尾上松也さんは、ウイスキーの発祥地であるサントリー山崎蒸溜所を訪れました。この地域は、桂川、宇治川、木津川の合流点であり、霧深い湿潤な気候と、名水「離宮の水」に恵まれ、古くから茶人や文化人に親しまれてきた特別な場所です。
ウイスキー作りの歴史は、創業者の鳥井信治郎がここに日本初の本格的モルトウイスキー蒸溜所を建設したことから始まりました。模倣を経て、独自の製法を学んだ先人たちが、日本ならではのウイスキー文化を築き上げ、今日に至る程に味わいが進化してきたのです。松也さんは、その歴史の中で育まれた、ウイスキー作りの背景と職人技を直に体験しました。
生み出される多彩な原酒
山崎蒸溜所では、現在でも多くの職人がさまざまな原酒を製造しています。仕込みの工程から発酵、蒸溜を経て熟成に入るまで、木桶やステンレス製の発酵槽、形状の異なるさまざまな蒸溜釜を使い分け、個性あふれる原酒が生まれるのです。この多様性は、役者が集まってようやく舞台を作り上げる過程に似ています。
特に評価されているのが、ジャパニーズウイスキーの「ブレンダー」の技術です。松也さんはチーフブレンダーの福與伸二さんと共にテイスティングを行い、100種類以上の樽から選ばれた原酒をブレンドする過程を見学しました。福與さんは、一滴の違いにも気を配りながら、日々試飲を通じて理想の味を形にしていく役割を担っています。このような繊細な作業は、AIには真似できない人間の技に他なりません。
ウイスキー文化の未来を見据えて
2023年に、新たに「パイロットディスティラリー」と呼ばれる小型蒸溜施設が設けられ、山崎蒸溜所のウイスキー文化のさらなる発展が図られています。この新施設は、品質研究や技術開発に用いられ、常に新しい挑戦が続けられています。このような努力が、岡前のウイスキーを進化させているのです。
世界が注目するジャパニーズウイスキー
舞台はロンドンに移ります。国際的な酒類コンペティション「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」で、ジャパニーズウイスキー「山崎18年」が最高賞「シュプリーム チャンピオン スピリット」を受賞しました。この受賞は、2023年に続くもので、これにより同一ブランドが3年連続での受賞を遂げることとなりました。尾上松也さんも、この快挙に対し日本人としての誇りを強く感じています。
「ジャパニーズウイスキーが海を越えて、世界で評価されていることは本当に誇らしい」と語る彼の言葉には、彼自身がウイスキー作りと同様に、伝統芸能に携わる者としての敬意と情熱が込められています。ウイスキーを愛飲する松也さんにとって、その奥深さは自然が育んだものだけでなく、作り手の情熱、技術の伝承や挑戦を重んじる姿勢にも支えられています。
松也さんのコメント
尾上松也さんは、山崎蒸溜所を訪れた際、「そのものづくりの過程を知ることで、ウォーターやソーダで割るのではなく、ストレートで楽しむべきだと思うようになりました。受賞した『山崎18年』を手に入れたら、ゆっくりと味わいたいです」とコメント。
ウイスキーの奥深い味わいを、山崎の自然や歴史、そして匠の技と共に感じることができる今回の旅は、ジャパニーズウイスキーへの理解を一層深めてくれるものでした。今後も、この伝統を受け継ぐ人々の挑戦に期待が寄せられます。