被爆80年を迎えた彼女が語る平和のメッセージとは
2023年は、広島に原爆が投下されて80年を迎えられる年です。小倉桂子さん(87歳)は、その時の衝撃をいまだ抱えながらも、被爆体験を語る活動を続けています。小倉さんは、被爆当時8歳で、原爆の爆心地から2.4キロメートルの自宅で被爆をしました。彼女は幸いにも軽傷だったものの、目の前で人々が次々と命を失っていく姿を目撃し、その光景は彼女の心に深い痕跡を残しました。
大人になった小倉さんは、長い間この経験を心の奥に封じ込めていましたが、42歳の時に運命が変わります。愛する夫は英語の専門家で、原爆資料館の館長でしたが、突然亡くなりました。その悲しみの中、夫の代わりに海外での通訳を依頼されたことから、小倉さんは被爆者の声を国際的に伝える活動を始めました。通訳としての役割を超えて、自身の被爆体験を語るようになってから、彼女は40年にわたり国内外でその思いを発信し続けています。
最近では、教育現場も継承の重要な場と考え、2022年にはアメリカ・アイダホ大学を訪問しました。彼女が持ち込んだのは、広島の高校生たちが制作した紙芝居でした。この紙芝居は、彼女の被爆体験を基にしたもので、アメリカの学生たちにとって新たな学びのきっかけとなりました。その結果、学生たちは紙芝居を英訳し、小倉さんの思いを広める運動を開始しました。このように彼女の思いは、アメリカの若者たちに影響を与え、教育の場を通じて次世代へとつながっていく様子が見られました。
卒業式の日、小倉さんは英訳チームのメンバーと感動的な再会を果たし、彼女の思いが確かに受け継がれていることを実感しました。「私の役目は、若い人の心のろうそくに火を灯すこと」と語る小倉さんの姿には、強い使命感が宿っています。彼女の生き方によって、多くの人々の心が動かされ、続けていく活動が生まれています。
小倉さんは8月6日が近づくにつれ、「来年の8月6日、私は元気でいられるかな?」と懸念する声も漏らしますが、それでも自身の残された時間で平和への種まきを続けています。そうした彼女の活動に、多くの人々が賛同し、支え合うことで、被爆体験の継承が進んでいます。
映画『被爆80年報道特別番組彼女が世界に語る理由』では、ナレーションに俳優の草刈正雄さんが参加しており、深い感情をもって小倉さんの言葉を届けています。「継承には教育とメディアが大切」と語る草刈さんの思いは、多くの人に届くことでしょう。小倉さんの体験を知ることで、過去の悲劇が二度と繰り返されないようにするための大切なメッセージとして、私たち一人一人がそれを受け取っていきたいと思います。
被爆者の平均年齢が86歳を超える今、彼らが残すメッセージの重要性は一層増しています。小倉桂子さんの思いが平和の種として、未来に向かって広がっていくことを願うとともに、私たちがそのバトンを受け継ぐ責任を感じる瞬間が必ず訪れるでしょう。テレビで放送されるこの特別番組を通じて、彼女の体験が多くの人に届き、共鳴することを期待しています。