調査の背景
近年の社会では、少子高齢化や人材の流動化、さらには働き方の多様化といった変化が企業の組織づくりに影響を与えています。特に、新人や若手社員が自らの意思で考えて行動する「主体性」は、企業のイノベーションや業務推進において不可欠な要素です。しかし、企業の人事担当者にとって、若手社員の「主体性・積極性」が最大の課題となっています。
調査の目的
今回は、心理的安全性が若手社員の主体性に対してどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、社会人1年目から4年目の1,793人を対象とした意識調査を実施しました。調査の結果として、職場の環境や文化がどのように若手社員の主体性を引き出すかを探ります。
調査結果の概要
1. 心理的安全性が高いと感じる社員
調査の結果、56.2%の若手社員が、勤務先で安心して自分の意見を伝えられると回答しました。このことは、心理的安全性が確保されている職場環境が存在していることを示しています。特に、業務以外でのコミュニケーションが活発な職場ほど、この心理的安全性が高まる傾向があります。
2. 自分の考えを伝えられることの重要性
若手社員の中で、周囲の社員と業務以外のコミュニケーションが多いほど、安心して自分の考えを伝えられると感じる割合が高く、逆に、そのようなコミュニケーションが少ない場合は、安心感が薄れるという結果が出ています。このことから、業務外の交流が心理的安全性の高い職場を形成する要因となることが分かります。
3. 貢献意識と主体性の関連
心理的安全性の高い職場にいる若手社員は、組織に対して貢献できることを自ら考え、行動する割合が高く見られました。逆に、安心感のない職場環境で働く若手社員は、主体性を発揮できていない傾向があります。データによれば、安心感を感じる社員の83.2%が、貢献する意欲を示していることが示されました。
4. 失敗を許容する文化の重要性
社員が挑戦を受け入れ、失敗を許容する文化が形成されている企業では、主体性を持って貢献する割合が高まることも調査によって確認されています。そのことから、失敗を責めるのではなく、学びとして得る文化が若手社員の成長を促進する要因となります。
5. 前向きなフィードバックが力を引き出す
上司や先輩からの前向きなフィードバックを受けることで、若手社員は組織への貢献を果たそうとする傾向が強まりました。具体的には、前向きなフィードバックを受けている社員の86.2%が、自ら貢献する意欲を示しており、逆に、そのようなフィードバックが少ない若手社員の多くは主体性を発揮できない結果が示されました。
結論
本調査から得られた結論は、多様化する職場での心理的安全性の重要性です。安心して意見を述べられる文化や、業務以外でのコミュニケーションを促進することが、若手社員の主体性を高め、企業の成長にもつながることが示唆されています。企業側では、心理的安全性を高める取り組みの実施が求められます。
いかにして心理的安全性を高めるか
職場文化の醸成: 他者の意見を尊重し、失敗を学びに変える職場文化を育むこと。
業務外コミュニケーションの機会創出: 部署間交流や社内イベントを通じて、社員同士の信頼関係を構築。
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上司との対話の促進: 1on1ミーティングでの密な対話を重ね、若手社員の意見をしっかりと傾聴すること。
このような取り組みを通じて、若手社員が主体性を発揮できる環境を整えていくことが、企業にとって重要な課題であることは間違いありません。