象牙を使わない箏コンサートが示す未来への希望と音楽の力
日本での象牙の売買禁止が世界的に求められている中で、特別なコンサートが開催されます。その名も「象牙を使わない箏コンサート~箏曲の地平線を望む夕べ~」。このイベントは、アフリカのゾウの保護と邦楽の未来をつなぐ、新しい試みです。日本国内での象牙取引問題を考えさせられると同時に、音楽を通じた交流の重要性も実感できる場となります。
象牙取引禁止とその影響
1990年には、ワシントン条約により象牙の国際取引が禁止されましたが、アフリカでの密猟は依然として止むことがありません。1970年代頃から減少傾向にあり、サバンナゾウは70%、マルミミゾウは実に90%もその個体数を減らしています。こうした状況に対し、2016年の国際会議で、日本国内市場の閉鎖が強く求められることになりました。
日本政府はその影響を否定する立場ですが、実際には国内においても象牙取引があり、それが密猟を助長している可能性があります。最近では、象牙を「マンモス」と偽って販売していた経営者が逮捕されるなどの事例も報じられ、問題の深刻さが浮き彫りになっています。日本の象牙市場は世界の37%を占めており、その在庫は251トンを超えるため、国際社会からの閉鎖要求はますます強まっています。
知識と選択の変化
最近の調査によれば、日本の消費者の88.3%が「象牙製品を買う予定はない」と回答しています。また、象牙と同等の品質で新素材が開発される場合、64.1%が代替品を選ぶとしています。これは、消費者自身がゾウの密猟とその裏にある事情を理解し、選択肢を持っている証拠です。環境問題への感心が高まる中で、よりサステナブルな選択をする人々が増えていることは喜ばしい現象です。
新素材の登場
今回のコンサートでは、竹由来のセルロースナノファイバー(CNF)を使用した新しい箏爪も披露されます。この素材は、従来の象牙に近い音色を実現することを目指して開発されてきました。開発の背景には、環境への負担を軽減し、ゾウを守るという意義があります。今回コンサートを主催するSera Creationsの眞田典子さんは、18年にわたる試行錯誤の成果を皆に届けるとのこと。
邦楽界の意識改革
邦楽の演奏者たちも環境問題に敏感になっています。箏奏者の明日佳さんは、象牙に依存せず、サスティナブルな楽器の生産を求める声を上げています。琵琶演奏家の水島結子さんも、素材の背景を意識することが演奏者の役割だと強調しています。彼女たちのメッセージは、これからの日本の音楽界の未来を照らすものです。
コンサートの詳細
2025年10月31日、東京ウィメンズプラザホールにて開催される「象牙を使わない箏コンサート」。アフリカの伝統音楽と共演しながら、新しい素材の音色を体験できる貴重な機会です。イベントでは、野生生物保全論研究会が提携し、講演や音楽演奏を通じて、象牙の問題とその代替品を深く理解できます。チケットは1500円で、親子室チケットは小学生以下は無料。申し込みはPeatixで受け付けています。
このようなイベントを通じて、私たちが直面する環境問題を意識し、ゾウを守るための取り組みを広げるきっかけを得ることができればと思います。音楽の力を借りて、持続可能な未来を共に模索していきましょう。