くら寿司が取り組む人材育成の新しい形：EX研修の実践と成果

近年、日本の外食産業は深刻な人手不足に直面しています。この状況を背景に、企業は「EX（Employee Experience：従業員体験）」の強化を図る体験型研修に力を入れています。特に、くら寿司の取り組みは注目を集めています。彼らが実施している研修によって、従業員のモチベーション向上やエンゲージメントの促進が図られています。

増し続ける国民的な関心

日本経済新聞社の調査によれば、外食業界の多くの企業が出店計画の縮小を余儀なくされている中、厚生労働省のデータでは「飲食物調理」の業界求人倍率は驚くべき水準に達しています。このことからも、外食産業における人手不足の厳しさがうかがえます。いったい、なぜこれほどまでに人手不足が進行しているのでしょうか。

主な要因としては、団塊世代の退職や少子高齢化、さらには働き方への価値観の変化が挙げられます。これらの影響で、企業は求職者に選ばれるために、働きたいと思える環境を整える必要に迫られています。

くら寿司のEX研修の実際

くら寿司では、従業員がただ仕事をこなすだけでなく、自分の職場環境がどうあるべきかを考え、感じることができる独創的な研修体系を導入しています。具体的には、農業や漁業の現場を訪れ、自らの手で体験する研修が行われています。この体験を通じて、社員は自社の企業理念や社会的意義を再確認し、食の安全性と安心を担う自覚を持つことができます。

具体的な研修内容

- ALL JAPAN CREW CONTEST：密度の濃い技能コンテストを通じて、各スタッフのスキルを向上させます。
- KURA-No. 1 グランプリ：店全体が競い合う格別なイベントで、接客や調理技術を競います。特に、調理スタッフの成果を認め合い、感謝を直接伝える機会を設けています。
- フィールドワーク：田植えや漁業体験など、自然の中で行われる研修が社員同士の絆を深め、改めて食材への感謝の気持ちを育てます。

これらの取り組みは、従業員が「ここで働きたい」と感じる環境を提供し、離職率の低下にも貢献しています。実際、2024年はくら寿司において記録的な低離職率を達成しました。

専門家のインタビュー

栄えある談話の中で、採用コンサルタントの谷出正直氏は、現代の採用活動や研修トレンドについて語ります。「今や企業が求職者を選ぶ時代から、求職者が企業を選ぶ時代に変わっています。企業は、自らを魅力的な存在としてどう発信するかが鍵です」とのこと。また、座学ではなく、実践や体験を通じた研修が求められているとも述べています。