大阪市立自然史博物館が明かすシイタケオオヒロズコガの幼虫・蛹のミステリー
大阪市立自然史博物館の研究チームが、シイタケの主要害虫であるシイタケオオヒロズコガの幼虫および蛹についての研究を行い、その成果を国際誌に発表しました。この研究によって、これまで不明だったシイタケオオヒロズコガの正確な形態が明らかになり、害虫防除の分野において重要な一歩となりました。
シイタケオオヒロズコガとは?
シイタケオオヒロズコガ(Morophagoides moriutii)は、日本国内で複数の種が分布するヒロズコガ科の一員で、栽培シイタケを食害することで知られています。特に幼虫は、榾木やシイタケの子実体を食べるため、大きな影響を及ぼすのです。おおよその前翅長は7〜10mmで、外見はクリーム色に茶色の斑模様が特徴的です。
1976年に大阪府立大学の森内茂博士は、この害虫が当時は唯一確認されていた種Morophagoides ussuriensisだと考え、その成虫、幼虫、蛹を図示しました。しかし、それ以降の研究で、図示された成虫と本来のM. ussuriensisとは異なる種であることが明らかになり、1986年には新たにM. moriutiiという名称が与えられました。
新たな研究の成果
最近、長田庸平学芸員が九州大学の朴鎮享氏及び森林総合研究所の北島博博士と共に、シイタケオオヒロズコガの幼虫と蛹の形態を再観察しました。その結果、過去に別種として図示されたものと一致することが確認され、分類学の混乱を解消する重要な成果となりました。
特に、幼虫と蛹の形態を詳細に示すことで、害虫防除に向けた新たな識別法の確立が期待されます。この研究により、シイタケオオヒロズコガの幼虫期の識別が行いやすくなり、作物被害の軽減につながる可能性があります。
研究の背景
シイタケオオヒロズコガ属には、1980年代以降に数種が発見され、現在ではその数は8種に整理されています。これらの種は斑紋が似ているため、従来の研究では混乱が生じていました。しかし、交尾器の形態やDNAバーコーディングに基づく識別法が確立されることで、正確な種の識別が進んでいます。
さらに、シイタケオオヒロズコガの幼虫と蛹の研究は、1986年の発表時から未解決の課題でしたが、今回の努力によってついにその形態が正確に図示され、分類学的な混乱が解消される第一歩となったのです。
今後の展望
これからの研究では、シイタケオオヒロズコガの他の種についての幼生期形態の図示を行うことが重要です。これによって、シイタケに対する害虫防除の手法が確立され、農業現場の運営に役立つことが期待されています。今後の研究成果に注目が集まることでしょう。
お問い合わせ先
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山上香代 (大阪市立自然史博物館)
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研究成果を通じて、これからも大阪市立自然史博物館の活動にご期待ください。