小野薬品とロゼッタが共同でマニュアル統合AIを開発
製薬業界の文書業務を効率化するために、小野薬品工業と株式会社ロゼッタが新たなAIツールの共同開発を開始しました。このプロジェクトは、2025年の6月から始まり、業界内のマニュアルや手順書の重複記載を自動的に検出し、整理・統合することを目的としています。
開発の背景と目的
製薬企業は、法規制の改正に伴い、各部門でマニュアルが個別に作成されることが多く、結果として同じ内容の文書が多数存在する“重複・類似文書”の問題が発生しています。このような状況は、情報更新の手間や業務の混乱を引き起こし、業務品質やコンプライアンスへの影響を及ぼすリスクがあります。
そこで、このプロジェクトではAI技術を活用して、複数のマニュアル内の重複した記述を迅速に抽出し、整理・統合していく革新的なアプローチを採用します。このような取り組みは、製薬業界における文書管理の新たな基準を打ち立てるものです。
技術とアプローチ
ロゼッタが開発した生成AI技術は、単に文書を比較するのではなく、文意レベルでの類似性を判断し、人間の業務思考に基づいた再構成を行います。これにより、マニュアルの標準化だけでなく、効果的な情報管理が実現します。結果として、ドキュメントの品質向上を図りつつ、運用コストを大幅に削減することが期待されています。
また、この技術は特定の企業に限定されることなく、将来的には「SOP統合AI」として製薬業界全体に普及することを目指しています。
開発の具体的内容
このプロジェクトでは、複数のマニュアルに存在する類似・重複表現を自動的に抽出し、その内容を統合・再構成するためのAIアルゴリズムとユーザーインターフェースを開発します。この課題に対して、小野薬品の実際のマニュアルデータを活用してAIモデルの性能を検証し、そのフィードバックを基に実用的なプロトタイプを完成させる計画です。
プロジェクトは5月に始まり、以下のスケジュールで進行する予定です:
- - 5月下旬:要件定義・デザイン確定
- - 6月~8月:開発・社内検証
- - 8月~9月:フィードバックの反映と改修
業界全体への展開
本プロジェクトで開発された技術は、単発の取り組みではなく、今後の「ラクヤクAI」シリーズの中核機能として正式なSaaSプロダクトに組み込まれる計画があります。この内容は、すべての製薬企業に対して迅速に導入可能な形で標準化し、業務マニュアルやSOPの統合を支援するツールとして位置づけられます。
今後の展望
小野薬品とロゼッタの共同開発によるこのプロジェクトは、文書の“整理・統合”といった新しい基準を提示し、製薬業界の課題解決に向けた重要な手段となるでしょう。これにより、業務の効率化と品質向上が期待されています。今後もこの技術は進化し続け、製薬業界のニーズに応じて柔軟に対応していくことが期待されます。