生物多様性保全を目指した新技術の開発がスタート
2025年に向けて、日本の大手6社が生物多様性のモニタリングを支援するため、衛星画像データを活用した新たな技術の開発に着手します。これには、NTT、バイオーム、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェア、NTTデータ、NTTドコモが参加しています。各社はリモートセンシング技術を駆使し、高精度で広域な生物・植生の推定を行い、持続可能な社会の実現に寄与することを目指します。
背景と必要性
世界の生物多様性は急速に減少しており、その影響は多数の経済活動に及んでいます。国連の生物多様性条約第15回条約国会議で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2022年から2030年にかけての生物多様性の保全が期され、企業のネイチャーポジティブ経済への移行が求められています。日本でも「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」が策定され、多岐にわたる主体が協力して取り組む姿勢が表れています。
しかし、現状のモニタリング手法は、オープンデータに頼る面が大きく、頻繁な更新や精度向上には限界があります。このため、現地調査を行う必要があるものの、手間やコストが大きな課題となっていました。これを打開するために、今回のプロジェクトがスタートしました。
新技術の実証内容
この新技術では、衛星画像データとバイオームが保有する850万件以上の生物データ、さらには各自治体が保有するフィールドデータを組み合わせ、特定地域の植生や生物種類の推定を行います。具体的には、NTTドコモが大阪府の「ドコモ泉南堀河の森」で、アサヒグループジャパンが広島県の「アサヒの森」でそれぞれ実証実験を行う予定です。
フィールド実証の概要
- 開始時期:2025年1月
- 目的:衛星データを用いて森林および生態系の把握方法を検証。
- 開始時期:2025年4月
- 目的:ビジネス用途向けの広域推定技術の確立。
これにより、両社は自然共生の可視化や生物多様性の経年モニタリングに取り組むことが期待されています。
各社の役割と今後の展開
NTTグループはこのプロジェクト全体を推進し、バイオームは生態系データを提供し、データのサービス化を検討します。NTTコムウェアはデータの解析と精度の検証、NTTデータは高解像度の衛星画像を供給します。
今後は、自治体や企業における生物多様性戦略の策定を支援し、具体的なビジネスユースケースを展開することを目指します。また、NTTドコモ・ベンチャーズからの出資を受けて使用するデータの精度を向上させ、新たな価値創出につなげていく予定です。
このプロジェクトは、日本の生物多様性保全に向けた重要な一歩であり、企業と自治体が連携して持続可能な社会を実現するための大きな前進です。私たちもこの動きに注目し、将来の環境への影響について考えを深めていきましょう。