背景
京都大学の松尾研から生まれた株式会社エムニと住友電気工業株式会社が手を組み、生成AIを駆使した二つの研究開発プロジェクトを進めました。これらのプロジェクトは、研究者が直面する課題にアプローチし、研究活動を効率化することを目指しています。
プロジェクトの概要
まず一つ目のプロジェクトは「論文からの物性値自動抽出ツールの開発」です。材料科学の研究者は、数多くの論文を参照し、実験条件や結果から必要なデータを抽出する手間に時間を費やしています。このツールは、その負担を軽減するために開発されました。従来のキーワード検索では満足いく精度が得られなかったため、ユーザー自身が定義した基準に従い、生成AIによって物性値を抽出する汎用的な仕組みが組み込まれています。
このツールは、グループ設定から始まり、PDFのアップロード、結果のダウンロードなどのステップを経て、ユーザーが手軽に物性値を確認できる仕組みになっています。特に、抽出結果の根拠となる部分をクリックすることで、迅速に確認することができるのが特徴です。
次のステップ
二つ目のプロジェクトは「電子実験ノートへの自動入力に関するProof of Concept(PoC)」です。現代の製薬業界では電子実験ノートが一般的になってきていますが、材料領域では依然として入力が負担になっていることがあります。そこで、自由形式で記入されたエクセルデータから情報を抽出し、規定のフォーマットに自動で変換する仕組みが開発されました。これにより、ユーザーはデータを効率良く収集できるようになります。
実際の結果として、エクセルデータの抽出においては100パーセントの精度を達成。一部の複雑な計算を要する内容でも高い精度での抽出が可能であることが確認されました。これにより、研究者が日常的に抱えるデータ収集の負担を軽減できると期待されています。
コメント
住友電気工業のAI推進部長、たくさんの変化がある中で、如何にLLM(大規模言語モデル)の技術を使いこなしていくかが生産性向上につながると強調しています。この取り組みは、単なるプロジェクトを超え、製造業における新たな開発スタイルの確立を目指しています。
一方、エムニの代表取締役社長下野祐太氏は、最先端のAI技術を駆使して、今後、製造業へのインパクトを残す取り組みを進める意向を表明しています。関西圏での製造業に役立つ取り組みを共に生み出していく姿勢を示しています。
エムニと住友電気工業について
住友電気工業株式会社
日本の電線やケーブルの大手企業で、環境エネルギーや情報通信、自動車産業など多岐にわたる事業を展開しています。大阪市を拠点にし、産業の発展に寄与するための技術開発に注力しています。
株式会社エムニ
東京に本社を置くスタートアップで、「AIで働く環境を幸せに、世界にワクワクを」というミッションのもと、製造業向けのオーダーメイドAIの開発を行っています。自身も大阪出身の下野氏は、地域の製造業に貢献することを目指しています。