人も動物も共に生きる未来を描く「One Welfare2025」講演会
2025年10月25日(土)、テーマ「絆を育む:人・動物・地域をつなぐ動物ボランティアのススメ」を掲げた講演会「One Welfare2025 ~人も動物も~」が開催されました。このイベントでは、北海道、大阪、兵庫の動物保護団体が集まり、高齢者支援と動物保護を結びつけた実践的な取り組みについて紹介されました。
高齢者とペットの共生の重要性
まず、大阪経済大学の経済学部教授 本村光江氏が、シニア世代がペットを飼う際に直面する課題や、その一方でペットとの生活が健康維持にどれだけ寄与するのかについて解説しました。日本は高齢化社会を迎えており、健康寿命の延伸に対する関心が高まっています。特に、ペットとのふれあいが高齢者にもたらす心身の健康効果が注目されており、孤独感の軽減や生活の質向上に寄与するといった利点が挙げられます。
しかし、ペットを迎え入れる際の「万が一の際に世話をしてくれる人がいない」「譲渡条件が厳しい」といった不安も大きいのが実情です。自治体や民間団体は、シニア向けの譲渡に関して慎重な対応を取る傾向が強まり、高齢者を対象にした譲渡制度に悩む団体の声が多く聞かれます。このような背景の中で、持続可能な飼育環境の整備が急務だといえます。
ワンウェルフェアの理念の下での新たな取り組み
講演会では、「ワンウェルフェア(One Welfare)」の考え方も紹介されました。これは、人・動物・環境が互いに影響し合い、共に健やかに暮らせる社会を目指す理念です。動物福祉を向上させることが、人の生活の質や地域環境をも向上させるとされています。具体的な取り組みをする団体として、3つのボランティア団体が登壇しました。
ツキネコ北海道の「永年預かり制度Ⓡ」
まずは、北海道の「ツキネコ北海道」代表 吉井美穂子氏。彼女は猫を保護した後、新しい家族との出会いを支援する活動を約15年続けており、注目されているのが「永年預かり制度Ⓡ」です。この制度は、猫の所有権を保護団体に残したまま一般家庭で預かってもらうもので、高齢者が安心してペットと生活できる仕組みを提供しています。万が一の際は、ツキネコが引き取ることができ、利用者はすでに400人を超えるなど、広がりを見せています。
ねこから目線。の取り組み
次に、大阪府の「ねこから目線。」代表 小池英梨子氏の紹介です。彼女は、猫専門の便利屋を運営し、野良猫や保護猫に関する有料サービスを展開しています。特に、迷子猫の捜索や不妊手術支援を中心に、高齢者向けに「飼い続ける支援」と「飼い始める支援」を行っています。これにより、猫と人がより安心して暮らせる環境づくりを目指しています。
teamねこのての活動
最後に、兵庫県の「teamねこのて」代表 水野直美氏が登場しました。この団体は、特に高齢者とペットの関係に寄り添いながら、「終生預かり」と「見守り支援」を行っています。高齢者のもとでペットが安心して生きられる環境を整え、飼い主が元気なうちに信頼関係を築くことに力を入れています。
まとめ
本村教授は、こうした活動を通じて高齢者が動物を飼う際の課題解決に向けた支援の重要性を強調し、地域との絆が深まる中で、人と動物の福祉がともに高まることの重要性を語りました。講演会は、参加者にとって新たな知見と共感を得る場となりました。
「現在、助けを必要とする人と動物がいる。そのため、共感できる団体を見つけ、積極的に支援の一歩を踏み出してほしい」という呼びかけも印象深く、参加者に行動を促しました。地域とのつながりを深めながら、すべての生き物が幸せに共生できる未来を描く「One Welfare2025」の理念を体現し続けることが期待されます。