ゲノム解析により触手冠動物の進化に新たな光が!
動物進化の解明は長年にわたる生物学の重要な課題の一つです。この度、岡山大学と台湾の中央研究院、東京大学の研究者たちが共同で行った研究により、触手冠動物の系統分類における長年の論争に決着がつきました。この研究では、ホウキムシとその親戚であるコケムシのゲノムを染色体レベルで初めて解析し、触手冠動物(Lophophorata)の単系統性を明らかにしました。
重要な成果の背景
触手冠動物は、腕足動物門、箒虫動物門、外肛動物門から成る生物群です。この研究は、特にホウキムシ(箒虫動物)のゲノム構造分析に重点が置かれており、ゲノム比較が動物の進化を解明する上での非常に効果的な手法であることを示しています。この成果は2025年11月8日に、米国の科学誌『Current Biology』に発表されました。
これまで触手冠動物の単系統性に関する議論は100年以上続いており、さまざまな研究者が異なる意見を提出してきました。しかし今回の研究により、ホウキムシとコケムシが姉妹群であることが確認され、触手冠動物の全体像が一歩明確になりました。
研究の具体的なアプローチ
研究チームは、ホウキムシのゲノムを詳細に解読し、染色体レベルでの比較分析を実施しました。その結果,触手冠の構造が三つの群に共通する相同器官であることが明らかとなり、これが触手冠動物の単系統性を支持する重要な根拠となりました。さらに、本研究はゲノム構造比較の重要性を強調し、今後、さまざまな動物群においてもこの手法が適用されることで、動物進化の理解がさらに深まることが期待されます。
研究のスタート地点
岡山大学の濱田麻友子教授は、ホウキムシを採集する際の困難な状況にも言及しています。波が強く採集をあきらめかける中、齊藤和裕技術専門職員の的確な目が、この研究のスタート地点を確保することに成功しました。このようなチームワークの結果、研究は大きな成果を挙げることができました。
今後の展望
本研究は、動物進化を解明する上での新たなステップとなるでしょう。さまざまな動物群におけるゲノム解析が進めば、進化の過程や動物の系統分岐に関する理解がさらに深化することが期待されます。
今後の研究において、岡山大学と中央研究院、東京大学が協力しながら動物の進化についての新しい知見を提供することが期待されています。未来の生物学的な研究がどのように展開されるのか、非常に楽しみです。